岐阜県内でただ1つ本陣建築が残された場所、
「落合宿本陣」の歴史を守り、後世に伝えたい
令和8年度(2026年)の整備工事着工を目指して
~プロジェクトの背景と目的~
かつて中山道を旅する大名や役人、
文化人たちが足を休めた落合宿本陣――。
岐阜県内で唯一、江戸時代の本陣建築が現存する貴重な史跡です。
200年以上前に建てられたこの建物のほかにも、敷地内にはいくつかの歴史的建造物が存在していますが、老朽化や構造のゆがみなどがみられ、本格的な整備が急がれています。
私たちは、令和8年度(2026年)の修理工事着工を目指し、整備事業に着手しました。
この貴重な文化財を未来へと継承するため、皆さまのご支援をお願いします。
落合宿本陣は、江戸から数えて中山道44番目の宿場「落合宿」にあった、幕府公認の宿泊施設です。
江戸時代から明治にかけての宿場文化を今に伝える本陣建築は、全国でも数例しかなく、岐阜県内ではここだけ。まさに、地域の宝といえる存在です。
しかし、年月を経て、建物には深刻な劣化が進行。主屋の一部を除いて見学ができず、耐震性や雨漏りの課題も抱えています。
本市では保存活用計画に基づき、調査・整備基本計画策定を進行中。総事業費は数億円規模にのぼります。
落合宿本陣の歴史を守り伝えたい
~岐阜県内でただ1つ本陣建築が残された場所~

落合宿本陣主屋内部の様子
落合宿本陣とは、かつて中山道落合宿に置かれた、江戸幕府公認の由緒ある宿泊施設です。大名や公家、幕府の役人たちが、旅の途中に休息をとるために利用しました。
中山道44番目の宿場町である落合宿は、木曽路の入口に位置する美濃国最東端の地。険しい山道を前にした旅人たちの、最後の安らぎの地として多くの人々に親しまれ、『前田慶次道中日記』(1601年)では、心を癒す場所として「落合の宿」が登場し、貝原益軒の『木曽路之記』(1721年)には、「木曽路を出てここに着けば、まるで我が家に帰ってきたような心地がする」と記されています。
また、江戸へ向かう途中の七代目市川團十郎が、追い剥ぎに襲われかけた際に駆け込んだ場所としても知られ、落合宿本陣は数々の逸話とともに歴史の舞台となってきました。

高貴な人々が利用した上段の間
落合宿本陣の敷地内には、主屋・土蔵・離れ・渡り廊下など、往時の面影を今に伝える歴史的建造物が残されています。なかでも、大名や公家などの高貴な人々が宿泊や御小休に用いた座敷は、主屋の内部に現存しています。
主屋は、文化元年(1804年)と文化12年(1815年)の大火により焼失したものの、文化15年(1818年)頃に再建され、明治時代の改修を経て現在の姿となりました。本陣建築が現存する例は全国でも数少なく、岐阜県内ではこの落合宿本陣が唯一。その希少性からも、極めて貴重な歴史的遺構であることが分かります。
明治維新を経て本陣制度が廃止された後も、明治13年(1880年)には明治天皇の巡幸時に御小休所として使用されるなど、落合宿本陣は中山道の要所として、引き続き重要な役割を担ってきました。
さらに、令和6年度(2024年)から始まった3カ年計画の発掘調査では、これまで絵図でしか確認されていなかった池や井戸の跡に加え、江戸時代の建物の基壇と見られる遺構も発見され、歴史的価値をいっそう高めています。


まちづくりの拠点にしていきたい
~市民との連携~

落合宿本陣一般公開の様子
落合宿本陣では、平成29年(2017年)3月より、表庭と主屋を無料で一般公開しています。この貴重な公開を支えているのが、「落合宿本陣ガイドボランティアの会」です。
会のメンバーは、毎週日曜日と祝日(12月から翌2月を除く)に来訪者を迎え、自ら学びを深めた成果をもとに、工夫を凝らしたわかりやすい案内を行っています。さらに、歴史的建築物を守るために、湿気対策としての空気の入れ替えや、草刈りなどの環境整備にも積極的に取り組んでいます。
こうした活動を支援するため、本市では現在、ガイドの皆さんを対象とした全6回の歴史講座を開講し、さらなる知識の習得と地域資源の理解促進を図っています。


落合宿本陣では、外国人観光客への英語ガイドに地元の中学生が参加するなど、地域の次世代による国際交流の取り組みが広がりを見せています。さらに、小学生の見学参加や、中高生の有志によるボランティア活動など、地域ぐるみで観光交流の担い手を育てる機運が高まっています。
歴史的な本陣建築が今も残る落合宿本陣は、地域にとっても誇るべきシンボルであり、かつて中山道の宿場町として多くの旅人でにぎわった落合宿のように、人が行き交い、にぎわいのあるまちづくりを進める上での重要な拠点施設として期待されています。
また、令和6年(2024年)11月24日には、七代目市川團十郎が落合宿の助けによって困難を乗り越えたという史実を題材にした新作歌舞伎『中津川成田道行 嘉永年間落合宿物語』が、吉例清流歌舞伎中津川公演にて初披露されました。公演時に役者の熱演に対して投げ銭された「おひねり」は、落合宿本陣の整備資金として寄附されるなど、地域の内外から整備に向けた気運が着実に高まりを見せています。


歴史的建築物を劣化・倒壊から守りたい
~安全な建物として活用するために~
敷地内に残る歴史的建造物のうち、土蔵・離れ・渡り廊下については、長年の風雨や老朽化により構造に歪みが生じ、安全性が確保できない状況にあります。そのため、現在は内部や外観を一般公開することができません。
これらの建物は、落合宿本陣を代々務めた井口家が、明治維新以降の社会の変化に対応する中で建てたものであり、近代における中山道落合宿の歩みを伝える貴重な歴史的遺構です。また、その建築的な意匠や構造から、近代和風建築としても高い評価を受ける価値を有しています。
現在は、雨漏りを防ぐため特別に丈夫な防水シートをかけていますが、台風のたびに破損し、その都度張り替えるという対応を続けています。さらに、土蔵には構造支持工事を、離れには構造補強を施していますが、いずれもあくまで応急措置に過ぎず、根本的な修復には至っていません。

土蔵の構造支持工事
この貴重な歴史的建築物を守り、安全に次代へ引き継いでいくためには、本格的な改修・整備が不可欠です。落合宿本陣の保存と活用のため、皆さまからの温かいご支援とご協力を心よりお願い申し上げます。

離れの構造補強工事
令和7年度(2024年)の
事業・事業スケジュール・進捗状況について
令和7年度(2024年)の事業について
令和5年度(2023年)までに策定した保存活用計画に基づき、令和6年度(2024年)から令和7年度(2025年)にかけて整備基本計画を策定しています。
今年度に実施する事業は以下のとおりで、事業費は総額5,000万円超を見込んでいます。
- 整備基本計画策定
- 発掘調査
- 建物耐震診断
- 建物調査解体等実施設計
事業スケジュール
- 令和4年度(2022年)~令和5年度(2023年)
保存活用計画 策定 - 令和6年度(2024年)~令和7年度(2025年)
整備基本計画 策定(整備事業 着手) - 令和8年度(2026年)
整備工事 着工
状況によって変更が生じる場合もあります。
進捗状況
落合宿本陣の改修・整備に向け、中津川市では、令和5年度までに「保存活用計画」策定をしました。
現在は、「整備基本計画」策定に向けた委員会を立ち上げ、関連する各種調査や議論を進めております。
寄附金の使い道
落合宿本陣の修理整備に必要となる費用の一部に充てさせていただきます。
目標額を上回った場合、下回った場合でも本事業に活用させていただきます。