岐阜県内でただ1つ本陣建築が残された場所、「落合宿本陣」の歴史を守り、後世に伝えたい
平成22年(2010)2月、国史跡「中山道」へ追加指定された落合宿本陣は、岐阜県内で唯一、本陣建築が現存する重要な史跡地です。
敷地内の歴史的建物群は創建から最大で200年余り、当市では応急修繕を繰り返しながら保全に努めておりますが、本格修理を目的とした令和8年度(2026)の整備工事着工を目指し、今年度から整備事業に着手しました。
整備工事には、数年前の概算で数億円規模の予算が必要となることが分かっています。かつての姿を取り戻した落合宿本陣を1日も早く皆様のお目にかけるべく、各種調査・計画策定を推し進めておりますので、ご支援・ご協力をどうぞよろしくお願いいたします。
落合宿本陣の歴史を守り伝えたい~岐阜県内でただ1つ本陣建築が残された場所~
落合宿本陣主屋内部の様子
落合宿本陣とは、中山道落合宿において、大名や公家、幕府の役人などが休泊した江戸幕府公認の宿屋をいいます。中山道44番目の宿場町、落合宿は、山深い木曽路を目前に控えた美濃国最東端の宿場町であり、古今、多くの旅人が立ち寄りました。
『前田慶次道中日記』(1601)にも安らいの地として「落合の宿」が登場、貝原益軒の『木曽路之記』(1721)では「木曽路を出て、ここに出れば、まづ我家に帰り着きたる心地する」と紹介されました。江戸へ向かう7代目市川團十郎が追い剥ぎに狙われた際に救いを求めた宿場として、映画「十三人の刺客」の舞台としても知られています。
高貴な人々に利用された上段の間
平成22年(2010)2月に国史跡「中山道」に追加指定された落合宿本陣には主屋・土蔵・離れといった歴史的建築物が残されていますが、この内、主屋の中には実際に高位の人々が宿泊・小休した座敷が残されています。
主屋は、文化元年(1804年)と文化12年(1815年)の大火で焼失した後、文化15年(1818年)頃に再建されたもので、明治時代の改修を経て現在の姿になりました。本陣建築が現存する例は全国的に見ても少なく、岐阜県内では落合宿本陣が唯一、それだけをとっても非常に重要な史跡地であると言えます。
明治時代に入って本陣名目が廃止された後も、明治13年(1880年)の明治天皇巡幸に際して小休場所となるなど、落合宿本陣は中山道に関わる重要な役割を果たし続けました。
床下確認風景
歴史的建築物を劣化・倒壊から守りたい~安全な建物として活用するために~
土蔵の構造支持工事
現在、毎週の日曜日や祝日に落合宿本陣の主屋や表庭を無料公開していますが、敷地内に存在する歴史的建築物の内、土蔵や離れについては老朽化や雨漏り等で蓄積した歪みによって特に安全性が損なわれた状況にあり、内部や外観をご覧いただけない状況にあります。
土蔵や離れといった建築物は、かつて落合宿本陣の役目を務めた井口家が明治維新後の社会情勢に対応する過程で建築したもので、中山道落合宿が近代化へ踏み出していった歴史の一端を反映するとともに、その建築的特徴から、近代和風建築としても高い価値を持っています。
離れの構造補強工事
雨漏り防止のため土蔵や離れに設置したシートは特別丈夫なものを選んではいますが、台風の度に破れてはまた新しいものを設置するということを繰り返しています。倒壊を防ぐために土蔵の構造支持工事や離れの構造補強工事も実施していますが、あくまで応急的なものであり、本格的な改修・整備が実施されるまでの時間を稼ぐものに過ぎません。
左:主屋小姓の間破損復旧状況 右:主屋小姓の間崩落仮復旧状況
現在一般公開している主屋に関しても、損傷の大きかった小姓の間を令和元年(2019)に仮復旧、また、令和5年度(2023)5月末の局所的豪雨によって崩落した壁面の復旧を行うなど、度々劣化に対する対応を迫られています。
こうした度重なる応急修繕は市の財政にとっても大きな負担となっており、本格的な改修・整備の実施が待たれるところではありますが、その実施にも莫大な費用が必要となります。
史跡内の歴史的建築物を守り、安全な施設として活用していくため、皆様のご支援・ご協力をお願いいたします。
左:主屋土壁崩落状況 右:主屋土壁仮復旧状況
まちづくりの拠点にしていきたい~市民との連携~
落合宿本陣一般公開の様子
落合宿本陣では平成29年(2017年)3月から表庭と主屋の一般無料公開を実施していますが、その担い手となっているのが落合宿本陣ガイドボランティアの会です。
会のメンバーは、毎週の日曜日と祝日(12月~翌2月を除く)に自らの学びの成果を取り入れ、工夫を凝らしたガイドを行う一方、湿気による建築物の劣化を防ぐための空気の入れ替えや、草刈り等にも積極的に取り組んでいます。
また、本市では、こうしたガイドの活動に資するべく、今年度から全6回からなる歴史講座を開講しました。
外国人観光客に英語で応対する地元高校生
小学生がガイド体験を行った「世界に1つの落合大好きっ子写真展」の告知
小学生の参加や、地元にある中津高等学校の有志生徒が行う外国人観光客への英語ガイドなど、ボランティアの裾野は広がりつつあります。
落合宿本陣は、地域においてもシンボル的な史跡であり、かつて中山道宿場町の1つとして落合宿が栄えたように、多くの人々が行きかい、賑わうようなまちづくりを進めていく上での拠点施設としても期待されています。
新作歌舞伎 予告公演
今年度は、7代目市川團十郎が落合宿の助けにより苦難を乗り越えた史実を題材にした新作歌舞伎が11月24日、吉例清流歌舞伎中津川公演にて初披露されるなど、整備に向けた気運が多方面で高まっています。
令和6年度(2024)の事業
令和5年度(2023)までに策定した保存活用計画に基づき、令和6年度(2024)から令和7年度(2025)にかけて整備基本計画を策定します。
今年度に実施する事業は以下のとおりです。
- 整備基本計画策定
- 発掘調査
- 詳細地形測量
- 石垣測量
事業実施のスケジュール
- 令和4年度(2022)~令和5年度(2023) 保存活用計画 策定
- 令和6年度(2024)~令和7年度(2025) 整備基本計画 策定(整備事業 着手)
- 令和7年度(2025) 設計 着手
- 令和8年度(2026) 整備工事 着工
※状況によって変更が生じる場合もあります。
令和4年度(2022)実施の調査・修繕
調査
- 土蔵・離れの建築学的調査
修繕
- 主屋 庇修繕
- 主屋 西側軒裏修繕
令和5年度(2023)実施中の調査・修繕
調査
- 史跡内総合状況調査
- 庭園調査
修繕
- 主屋 軒裏修繕
進捗情報
落合宿本陣の改修・整備に向け、中津川市では、令和5年度までに「保存活用計画」策定をしました。
現在は、「整備基本計画」策定に向けた委員会を立ち上げ、関連する各種調査や議論を進めております。
詳細については、当市公式ウェブサイトもご覧ください。
目標額を超えてご支援いただいた場合には、次年度以降にかかる修繕費用に使用させていただくとともに、観光、産業振興など、中津川市の発展のためにも使用させていただきます。